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家造りのヒント

家造りのヒント(家造りの変遷と自然素材の使い方)

戦後日本の住宅は決定的な資材不足の中で合理的に大量の家を供給しなければなりませんでした。現在では家のほとんどは化学建材メーカーが作った新建材でできており、自然の素材に直接触れることは容易ではありません。もともとは資材が高騰していたので安く建てるために新建材を選んでいたはずなのに、新建材でできた日本の家はいつの間にか世界で一番高価な家になってしまいました。
 本物の自然素材が良いという風潮は徐々に浸透してはいますが、新建材の家に住み慣れ、様々な宣伝文句をたたき込まれた人たちにとって、情報だけで自然素材の良さを判断することは難しいと思います。テレビやネットの情報全体が工業製品の宣伝媒体になっているからです。色や模様がカタログ通りにはならず、作る人によって出来栄えが違い、明確な説明書もない自然の素材に対して、めんどくさいと思う人もいると思います。しかし自然を観察し理解することは、人が自然の中で生きてゆくために行うべき最も基本的な行動であったはずです。伝統的な工法や素材で作られた家には先人の知恵や工夫を読み解くこともできます。
良いか悪いかを判断する前に本物に触れてみることは大切なことですが、実際ちょっと触っただけではわかりません。しばらく使ってみて何もないじゃないかと思いう人もいると思います。化学薬品や機械も使わないのに、アレルギーもなく、病気もせずにリラックスして暮らせることが自然素材の本当の良さだったりするのです。我が家には10年近く使っている杉のまな板があります。最初に薬品や熱湯での消毒はしないでくださいと言われたので水洗いだけで済ませています
が、変に色が変わることも、食中毒になることもありません。樹芯に近い赤身の部分ですが、森の立木の状態でも樹木が活動しているのは樹皮の裏側のほんの少しの部分で、あとの部分は腐って倒れないように強度と抗菌性を備えており、高温の乾燥機などを使わなければ木材になってもその性質は生きています。そんな素自然界にある性質を貸していただくのが自然素材の楽しみ方だと思います。

伝統工法の知恵

日本の木造技術は世界的に見ても貴重なものだと思います。継手仕口に関してはポストアンドビームのログハウス等、世界の職人が使用しており、高層建築の制震技術に関しては、最近完成したスカイツリーでさえ1500年以上前の技術を基本にしています。伝統工法の最大の特徴は持続可能で環境と共生していることで、現在の技術ではすでに実現不可能なことなのです。
 自然の世界には何の機能も持たない素材は存在しません。素材の性質だけでなくバラバラな形でさえも自然界で生き抜くためには重要な要素なのです。私たちの祖先は現在では考えられないほどの知恵や工夫を積み重ねて伝統を作ってきました。自然の素材には人が考える以上に素材が人のことを考えてできているのです。傷がつきやすいとか、色や形が気に食わないという人の趣味や都合で無視してしまうにはもったいないほど優秀な機能を持っています。建築業界には毎年新しいものができていますが、良し悪しの判断には伝統と比較してみるようにしています。

隠れたところも手を抜かない(美しく朽ちてゆく過程に住まう)

昔ながらの建築はなぜこんなにも手間をかけ、なぜ見えない壁の中まで美しく作るのでしょうか。見えないところでも手を抜かないという道徳的な美学もあったでしょう。材料の性質を利用した建材は存在する間は機能しています。100年200年と風雪に耐える伝統建築は実は朽ちて行く過程に住んでいるのだと思います。造られて行く過程が美しいものはその過程がさかさまになって美しく朽ちて自然に帰ります。古くなっても美しい建物は無駄につくられているわけではありません。近代建築の巨匠ル・コルビジェは「住宅は住むための機械である」と言いました。機械の意味合いは時代と共に変わっていますが、近代住宅は完成した時が最も美しく、様々な設備は新品の状態を基準に安全性を考えられています。現在の住宅は100%そろわないとその機能を発揮しません。機械換気が止まればそれだけで安全な家ではなくなってしまうのです。

耐震・制震・免振(3段階で地震を制御・メンテナンスの周期に合わせる)

地震に対する建物の対処法として現在では3つの方法があります。一つは金物や筋交いなどで補強して剛性を高める耐震。最近まで住宅の地震対策といえば耐震のことでした。しかし近年実物大の試験などで固めることへの限界が露呈して、制震や免振などの工法も普及し始めています。制震とは地震の揺れを吸収して小さく抑える方法で、ダンパーや制震ゴムなどを使って吸収します。免振とは地面と建物の間を可動式にして地震の揺れを建物に伝えないようにする工法です。
昔はそんな言葉はなかったのでしょうが、伝統工法には上記の3つの効果が期待できることがわかっています。100年単位で起きる巨大地震に対しては石の上に置いてある土台との間で吸収、又は転げ落ちることで免振効果を発揮。30年単位で起きる地震には小舞に塗った土壁のひび割れで吸収。それは、クサビの締め直しや、土壁の化粧直しの時期とも一致するので予想外の負担にはならなかったはずです。毎年おこる程度の地震には土壁の強度で持たせていたと考えられます。法隆寺の5重の塔などでは近代の高層ビルにも通じる免振工法が使われています。

土壁に藁を入れる技術(身近なもので強度と衛生を考る)

昔の民家には当たり前のように使っている土壁ですが、土壁の土を作るときに藁を混ぜて発酵させる過程があります。藁の繊維で割れを防止したり、腐って糊状になることで塗りやすくなるなどの効果は知られていますが、同時に藁の中にある納豆菌を繁殖させることにより他の雑菌を増やさないようにしていたのだと思います。納豆菌は自然界では非常に強い菌なのですが、人体には有益で納豆になるほどで、食べても安全です。食べても安全というのは自然素材を見極めるうえでは大切な判断基準です。最近では消臭や防カビ材としても利用されています。こんな多機能な素材を科学的に作ったらいくらかかるかわかりません。

渡り顎・(乾燥させながら強固な骨組みを作る)

民家本来の渡り顎工法は、未乾燥の丸太材を使って 組み上げ、乾燥して収縮やねじれようとする力で抜けなくなるように工夫されています。骨組みができたら1年くらいかけて乾燥させたそうです。
曲がった梁をそのまま使うことで柱の長さがバラバラになりますが、地震の時にはバラバラの揺れ方をすることで揺れが大きくなるのを防ぐことができます。梁と柱を立体的に接合させることで横からの力に耐えることができるようになります。
万が一倒壊してしまった場合にも梁と地面の間には空間が残りますから、梁の下敷きになって亡くなることも少なかったと思います。ちなみに民家の倒壊は現代の筋交い構造のように急激には倒れません。

囲炉裏の火を絶やさない(防虫効果と湿気を呼び込まない技術)

民家の囲炉裏は暖房や、煮炊きなどにも利用され、1年中火を絶やすことなく使われていました。囲炉裏の煙で茅葺の屋根や骨組みを生き物や雑菌から守ったと言われていますが、同時に家の中心を温めることで床下に湿気が溜まることを防いでいたと見ることもできます。古くは竪穴式住居からの文化だと思います。お茶室の床下などは高床式にしながらも地面すれすれの土台まで壁を塗り下ろしており、積極的に換気をしているようには思えません。お椀を伏せたような構造で囲炉裏で温めた空気を逃がさないようにしています。神社や倉庫のように火を使わない建物は風通しを優先に考えて外気との温度差をなくしていたと考えられますが、茶室や民家など、火を使用して人が住む建物は冬のことを考えれば熱を逃がさないようにしたのも当然だと思います。戦後神社仏閣を作っていた宮大工ばかりが技術の伝承者のように扱われてきましたが、彼らは本来人の住まない建物を専門で作っていた訳で、温熱環境に対する文化の継承がなされなかったように思います。戦後床下の風通しが重要になったのは、床下に断熱材を入れるようになってからです。床下を外気よりも少しでも温度を高くしておくことができれば、雨が吹き込まない床下は少しの開口で乾燥させておくことができます。逆に風通しを確保しても冷たい床下では結露を招いて湿気を集めることになります。

主屋と下屋(変化させる部分と変わらない部分)

民家には13尺≒4mの柱で作られた主屋の部分と、でそれを囲むように作られた下屋の部分があります。主屋は田の字型など単純なつくりですが、汎用性の高い間取りでもあります。下屋は縁側や納戸、水回りなどで、風雨で傷みやすい主屋の足元は下屋で守られています。屋根も主屋の下に差し込む形でできているので、メンテナンスや生活の変化に応じたリフォームもやりやすかったと思います。元々はガラスなどがない時代にできた物なので、暗いという難点はありますが、茅葺のぶ厚い屋根と、下屋の部分で2重に仕切られた空間は断熱性も高く囲炉裏や土間の冷気で空調された空間は夏の快適性はよく言われることですが。囲炉裏が機能している家で、直火や土間全体を温めた家は、不完全な断熱で結露だらけの家よりも快適だったのではないかと思います。

家造りの新しい知恵

床下の問題

床下の問題

床下の問題

床下の問題

床下の問題を原点から考えてみます。

もともと日本の家の床には断熱材などは入っていません。そして囲炉裏やかまどは直接土間に置され、毎日火を入れ温められます。
住居の床下は土壁や板戸で仕切られており、神社のように1年中開放的にしていたわけではありません。
換気は床下最下部の石と土台の隙間等から一番重く冷えた空気が排出されるようになっています。

昭和25年の基準法ができたころから日本の住宅は高床式が標準になりました。かまどや囲炉裏も少なくなり床下を温めることができなくなり、そしてオイルショック以降は床下にも断熱材を入れるようになり床下に生活の熱が伝わることがなくなってしまいました。そのころから湿気の多い床下を守るために防腐剤や防蟻処理を行うようになり環境は悪化してしまいました。現在一般的なべた基礎と基礎の上端から通気をする猫土台では床下の温かい空気を逃がすだけで、下端の冷たい空気は動かせません。

以上の考察から現在では基礎断熱を推奨しています。防蟻処理は揮発しないホウ酸系のものを使えば安全で効果は何十年でも持続します。床材は杉板の無垢材で湿気は床全体で逃がします。基礎断熱のメリットは建物の熱容量が大きくなり建物の急激な温度変化を和らげることができることです。全体暖房をするときは床下全体に蓄熱させるのがベストな方法だと思います。

理想の冷暖房を考える 暖は輻射で、涼は風でとる。

理想的な冷暖房を考えてみます。
冬場の暖房と共にいつも悩まされるのが過乾燥の問題です。エアコンなどの空気を温める暖房器具では温度を上げるだけなので相対的に湿度は下がってしまいます。さらに風が当たることによって乾燥が助長され、おまけに体感温度も下がってしまいます。暖かい空気が冷たい壁に触れると結露が発生して様々な問題を引き起こします。

これらの問題を解決できるのが、直火やパネルヒーターなどの輻射暖房機です。さらに毎日温めたり冷やす事で起きる結露や劣化を避けるために蓄熱式の輻射熱暖房とするのがベストな方法です。冷房については輻射でとろうとすると逆に結露しやすくなります。こちらはエアコンでも良いすが風を感じることで体感温度を下げることができます。温度を下げると湿度は上がってしまうので、適度な除湿は必要です。

更に快適性は温度だけで決まるものではないので、様々な方法でストレスを軽減することにより、快適に感じる温度帯を広げることができます。同じ温度変化に対しても時間や季節の変わり目を感じさせ生活のリズムを整えるために必要な変化もあります。日本の関東近辺の気候は1年の内の半分は窓を開けていても気持ちが良いのも事実です。外気から遮断された状態ではなく、心地よく外気を制御することも大切だと思います。温度差は少ない方が快適という説もありますが、環境の変化を意識させる適度な温度変化は必要だと思います。日本の文化そのものが四季の移ろいを楽しむようにできています。

一言いいたいポイント

無口な素材に代わってアドバイス

自然の素材にはそれぞれに違う性質があるので、サイディングのように気軽に色や模様だけで選ぶわけにはいきません。本来は選択し経過を見とどけることが自然を学ぶプロセスなのですが、そんな経験を踏まえて気になる点をアドバイスさせていただきます。

木製デッキ(屋根さえつければ3倍長持ち)

木製デッキ(屋根さえつければ3倍長持ち)

木製デッキ(屋根さえつければ3倍長持ち)

北欧の家などでは見ることの多い屋外の木製デッキですが、日本の気候では雨ざらしの木製デッキでは10年程度、腐りにくい材料を使っても15年~20年程度しかもちません。伝統的な日本の縁側には昔から深い庇がついています。ヨーロッパ人がアジアの植民地時代に作ったコロニアルスタイルにも家から出たら深い庇があってその下に木製デッキとロッキングチェアーでくつろいでいるようなスタイルだったはずです。せっかく作るデッキなのですから、屋根をつければ3倍くらいは長持ちします。外でくつろぎたい季節には雨が多く、日よけがほしい季節が多いのです。

薪ストーブは覚悟をもって

 

震災の影響もあってか電気や石油を使わない薪ストーブを望まれるお客様が多くなっています。個人的には炎のある生活空間は魅力があっておすすめなのですが、薪ストーブを使うにはそれなりの覚悟が必要です。もともとヨーロッパでは、暖房や煮炊きだけではなく、開口の少ない家の中を換気するために暖炉やストーブはなくてはならないものでした。リビングの中心で家族団らんのシンボル的な存在でもあります。住宅設備の元祖のようなものなので相当気合を入れて作られています。単に生活を便利にする道具だと思って使おとしても思うようにはいかないでしょう。冬のライフスタイルを変えるくらいの覚悟は必要です。

①家の中で直接火を使うので煙突やストーブ廻りなどしっかりとした対策が必要です。工事はプロに任せましょう。設置後も煙突掃除などのメンテナンスが必要で相談できる人が必要です。

②ほとんどの場合、経済的な理由ではお勧めできません。薪を買うとなると光熱費は高くなります。ポイントは薪の炎に魅力を感じられるかということと、薪を用意することを楽しんでできるかということだと思います。ストーブを使ってじっくりと料理を作るのも冬の楽しみになります。

 

外装は適材適所メンテナンスも考えて・呼吸する壁には庇がほしい

サイディングをはじめとする近年の家造りでは坪単価を下げなければならないという命題があり庇の少ない、又はない家が多くなりました。原則、壁の中には防水層と通気層を設けなければならず外壁のサイディングは日よけと化粧の役割程度しかありません。仕上げがペンキなのでレンガ調にも板張りのようにもなるのですが、1mmに満たないペンキの層は10年程度でメンテナンスを必要とします。そこが大丈夫でもサイディングの間を埋めるコーキングの劣化があるので一緒にやってしまおうか・・・・・となります。
漆喰等の塗り壁材は呼吸をしながらゆっくりと硬化してゆくので静電気による汚れが付きにくく、10~20年程度では硬化の途中で劣化には至りません。欠点は水分を含みやすく雨の多い季節に湿ったままになっていると雨染みや苔が生える原因にもなります。壁全体で呼吸でき、断熱効果もあるので本来は通気層がなくても大丈夫な素材です。ベランダや庇の取れない壁にはガルバリウム鋼板に通気層を設けて使うようにしています。これは屋根材に近い仕上げ材です。

庇を出さない家のホントの事情

庇を出さない家のホントの事情

庇を出さない家のホントの事情

庇を出さない家のホントの事情

国内でも庇のない家が多くなりましたが、旅行先やテレビの情報などで国外の影響を受けている人も多いと思います。伝統的に庇のない家にはそれなりの環境的な事情があります。
①米サンタフェでは1年の内300日は快晴で雨や湿気で家が腐ってしまうことはないので庇もなく梁の丸太が飛び出した家でも問題ありません。
②英コッツウオールの外壁は石積みで腐ることがなく寒冷な地域なので家を破壊してしまうような植物も生えません。また、石の隙間を苔で埋めたりしているので雨がかかった方が隙間風が少なくなるのです。
③スペインや地中海沿いの集落では海風が当たるので雑菌やほこりが少なく、狭い路地を明るくするためには庇は邪魔になります。

自然の個性と変化を楽しみながら

床材には原則杉板の浮造り節有30mmをお勧めしています。
杉は日本の人工林の40%以上を占める日本を代表する素材です。100年後に補修が必要でもほぼ同じものが手に入ります。節や年輪部分は非常に固く、間の材は柔らかいため、触感が柔らかく、傷にはなりやすいのですが、使い込めば年輪が浮き立って傷は目立たなくなります。節は最初に気になる人はいますが、穴の開いた節でなければ節のある方が固くて油分も多いのです。生活してみると節材の方が傷や汚れも目立たないので、細かい傷は気にせずにおおらかに使っていただければと思います。実際20年も使い込めば気を使っていてもそんなに変わりません。細かい傷を気にしすぎるのはプリントの新建材を使ってきた世代の文化なのだと思います。プリント合板は傷つきにくくなっていますが、少しでも傷がつくと全く違った醜い姿になってしまいます。自然素材は懐が広いのです。

広く・明るく・開放的に(外に出るのも自然な欲求である)

 広く・明るく・開放的に(外に出るのも自然な欲求である)

 広く・明るく・開放的に(外に出るのも自然な欲求である)

広く・明るく・開放的に・・・とはどんな人からも言われてる要望です。要望を変えていただきたいときには逆に「狭い・暗い・閉鎖的になります」と言った言葉は良く使われます。かといって体育館のような空間でどれだけ幸せな気分になれるかと考えれば広く感じるのも限界があることもお分かりではないでしょうか。家の中だけですべての欲求を満たすことは不可能ですし、それは健康的な選択ではないと思います。そうした欲求は何もない自然の空の下で一息つきたいと感じているのかもしれません。

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