小菅孝一級建築士事務所

世界のエコ建築


ヨーロッパ・アメリカ・日本のエコのちがい。(建築として)
世界的にエコロジーは高い関心を集めていますが、ヨーロッパ、アメリカ、日本では取り組み方に違いがあります。

ヨーロッパのエコは哲学です

明らかに厳しい条件の中でも、理想をもって必死に取り組んでいます。デカルトが物質と精神論で分けたように、ヨーロッパのエコも精神的、生物学的なエコ(バウビオロギー)と、機械的な発明や工夫で究極の省エネを模索しようとする方向(バウエコロジー)があります。これは重要なことで、技術的に解決できないことを精神論にすり替えてしまうようなことを防いでいるのだと思います。バウビオロギーの考えはルドルフシュタイナー(〜1925)によってはじまり、80年以上の歴史があります。建築的にも近代建築に影響されないほどの強い信念を持っており、色彩、形状、施工の方法に至るまで、教育的、哲学的な規範を持っています。

建築の施工という分野に限って言えば、民族建築にも通じる造形は、本来ならば自然の草木をそのまま使う形を理想としていればエコな建築といえます。しかし実際はこうした曲線を表現するために曲がった木から直線の材料を取り、直線の材料から曲がった形を切り出すといった非常に効率の悪い方法を取ります。近代建築は複雑な曲線は苦手なのです。日本でシュタイナー建築を展開する村山雄一氏に飯能の子どもの森の建築についてその点を尋ねたところ、シュタイナー建築の曲線や造形は精神的な表現なので、自然の曲がった木材をそのまま使いたいという考えではないのだそうです。時代的な視点の違いはありますが、シュタイナーは自然の持つ力の重要性を古くから説いており、ヨーロッパのエコ活動の理念を支えています。
一方機械的に高性能な断熱や太陽の集熱をしてエネルギー効率の良い家つくりの研究も盛んです。


アメリカのエコはレジャーです。

広い国土を生かして自由で大胆な実験が行われています。
アメリカのエコ建築の代表といえばFLライトが挙げられます。当時はエコというよりは彼の美意識に基づいたものだったのでしょうが、世界の巨匠が鉄とガラスといった無機質な素材で表現している中で、地域の素材や、民族的な意匠を巧みに取り入れ、環境的な要素を色濃く反映した自らの建築を有機的建築『Organic House』と呼び多くの作品を残してきました。

ライトの建築学校タリアセンでも学んだパオロソレリは生物学的な代謝やつながりを都市計画に取り入れ都市の最小単位は人の歩ける範囲と考えた都市『アーコサンティー』をアリゾナの真ん中で作り始めました。その後多くのボランティアや賛同者も集め、彼の哲学を広める教育機関として、教育と都市建設を行っています。アメリカでは国としての環境の取り組みは評価されていませんが、自由の国だけあって、さまざまなな実験的な試みがなされています。

不用品からエコ建築を作るアースシップ


日本のエコは看板です。

エコハウスと名前を付けるとお客が増えるからやっています。すぐに性能、実績、利益を求められ、顧客側も何か得になることを説明しないとふ踏み切れません。補助金も大量生産可能な工業製品にばかり使われて、昔から続いていることや、実験的な試みにはなかなか使えません。日本は古い文化と伝統のある国であり、江戸時代は環境的自立をしながらも、多くの文化を生み出してきた経験のある貴重な国であることも忘れてはいけません。伝統の中に多くのエコ的な要素を持っているのです。建築の分野ではそんな伝統が軽視されすぎています。基準法の中にツーバイフォーやログハウスの基準はあるのに伝統工法の基準はありません。筋かい工法は在来工法とは言いますが明治以降に普及したもので伝統工法ではありません。寺社建築については神社やお寺の修復があるので、宮大工の技として残していますが、昔から宮大工は家を造っていませんでした。昔から日本の家を作ってきた秘術はすっぽりと抜け落ちているのです。伝統建築の議論では構造的な議論が大半ですが、個人的には衛生環境や温熱環境、伝統行事の意味なども住宅建築には重要だったと思っています。