健康・快適・エコロジー ソーラーよりも、原子力よりも、高性能な薪ストーブを
CO2削減が叫ばれて久しくなりますが、日々の生活でどう取り組むかとなると具体的な方策は立てにくいものです。2001年の日本のCO2排出量は1139万トンそのうち家庭から出されるものは14%と言われています。その他は、製造36%、事務17%、旅客14%、貨物9%、エネルギー転換7%・・・・・。(積水ハウス調べ参照)
家庭での削減を図っても14%と考えると少なく感じますが、様々な産業の目的が豊かな家庭環境を作るためと考えると家庭での選択が他の産業構造に与える影響は少なくありません。
単純に考えても、現在の身の回りの物の消費サイクルは早すぎると思います。もっと良いものを作って大切に使えば製造分野でのCO2は減らせます。利益確保を考えるならば、多少高価になっても無駄にならない良いものを作ることだと思います。そのためには消費者が良いものを見極める目を養うことが大切です。建築資材を化学建材ではなく自然素材を選ぶだけで化石燃料での増加を減らすことができます。輸入材ではなく身近な国産材を選択すれば貨物でのCO2を削減できます。工業製品ではなく身近な自然をいかに利用できるかということがポイントだと思います。
家の中でくつろげる空間ができれば、外出する時間を減らすことができ、旅客でのCO2が減らせます。代わりに家の手入れやガーデニングに励めば町全体が美しくなり、街を歩くのが楽しくなるのではないでしょうか。現在の生活では美しい場所に逃げ出す前に、身近な環境を美しく整えることを忘れているのではないかと思います。このままだと外出先はどんどん遠くなるばかりです。生活を豊かにしながら環境にも貢献できる方法はまだまだたくさんあります。それには人と自然との本来のあり方をシンプルで伝統的なものに見直すことが先決です。技術革新も大切ですが、消費拡大を優先させた、各業種で都合の良い未来予想図で進められていることも多いのは確かです。電気会社とガス会社の未来予想は異なります。多角化することは消費拡大のうえでは歓迎されますが、最先端と称されるものが生き残り競争の結果、膨大なごみの山になってしまうことも多かったのが競争原理の盲点です。最後の選択権は消費者が握っています。
●家の中のエコ
1軒の家を建てるということは、多くの人にとって生涯最大の買い物であり、その規模故に環境に与える影響も大きいといえます。1軒の家を作るためのCO2排出量はおよそ84tで生活のために出されるCO2のおよそ15年分に相当します。そのうちの原材料に占める割合は半分程度の47tですが、そこに埋蔵資源の石油製品を使えばそのまますべてがCO2の増大になります。そこを木材などの循環する自然素材を選択するだけでその分の排出量はゼロになります。
日本の家の平均的な寿命の30年で考えると、生活で出されるCO2は建設時に出される2倍に相当してきます。これは最近の気密化された家での数値なので自然素材だけで家を作っても、昔のような効率の悪い家でエネルギーをたくさん使った生活をしていたら効率は良くない訳です。そこで大切なのは自然エネルギーの有効活用と、エネルギーを無駄にしない省エネ住宅の技術です。
自然エネルギーの有効活用は太陽光発電や、空気の熱を利用したヒートポンプなどが最近増えています。しかし深い庇を設けた縁側や、風通しに配慮した間取りを作ることはずっと昔から当たり前にやっていました。光と風をデザインすることは住宅設計の上では基本的なことです。新しいことに気を取られて昔からやっていることを忘れてしまうことも多いので気をつけたいものです。庇もなく小さな窓が並んだ家に太陽電池を付けて「オール電化・エコ住宅」などという看板がでていると、やはり何か違うのではないかと感じてしまいます。それは設備を売るための家になっているのです。省エネのために太陽光発電などの新たな設備を増やすことは生活時のCO2は減りますが、建設時や、産業部門でのCO2は確実に増加します。無計画な設備や、性能の悪い環境設備ではCO2は逆に増大してしまいます。まずは日当たりを考え庇や風通しや庭の植樹から始める方が確実だと思います。
省エネ住宅で大きなハードルとなるのが断熱の問題です。冷暖房でのCO2は生活全体の25~30%ですがその数値は国として定める最高レベルの次世代レベルの断熱をしてもそれほど変わりません。断熱することで変わるのはライフスタイルです。それまで炬燵と石油ストーブで我慢をしながら1部屋をやっと暖めていた生活から、同じ程度の光熱費(生活スタイルによっては増えることもあります)で家全体を暖めることができます。それだけでトイレや浴室が快適なのはもとより、お年寄りが脳卒中で倒れる事故は大きく減らせます。我慢といっても、家の中には小さな子供やお年寄りもおり、快適志向も高まっているので、断熱をしなければ、光熱費の増大が抑えられないのです。間取り的にも間仕切りや建具を減らし、広く快適な家を作ることができます。さらに大切なことは部屋の温度差をなくすことで室内温度を低めに設定でき、結露も防止できるので、住宅の寿命を飛躍的に延ばすことができるのです。長い間日本の住宅が短命なのは、日本独特の高温多湿が原因と言われてきました。しかし夏とは反対に冬の気候は乾燥に向いているのです。そんな季節に結露で湿らせてしまったら1年中乾燥する機会はありません。そんなことの繰り返しが短命住宅を作ってきたのです。
昔の家が100年以上も長持ちしたのは暖房方法にも大きな違いがありました。昔はかまどや囲炉裏で家の中で直接火を使い、火のそばでは大量の水蒸気が発生していました。乾燥した空気で熱を伝えるために水蒸気は欠かせません。そんな環境でも結露が無かったのは、家が密閉されていなかったからです。しかしこの方法には大きな欠点があります。温まるには非常に多くのエネルギーが必要で、その多くはあっという間に外に逃げてしまうことです。今でも開放的な住空間でできた生活習慣は残っています。開方式の石油ストーブや、給湯機などを使っている住宅はまだまだたくさん残っていますが、それらは現在のような気密住宅を基準には作られていません。給湯器の死亡事故が相次いだ問題では住環境の変化と対処の方法を明確にしてこなかった住宅を作る側や基準をあいまいにしてきた国にも責任があると思います。開放的な住宅ではそれまで我慢しながら多くのCO2を出していましたが、断熱された家ならば少しの我慢と工夫をすればその分のCO2は減らすことができます。
給湯はCO2排出の30%を占め半分以上は入浴に使われます。最近ではエコキュートが省エネ給湯器として普及してきていますが、石油の給湯器からエコキュートへの交換ではCO2の削減にはなりません。電気エネルギーは石油から発電して家庭に届くまでに直接得られるエネルギーの1/3になってしまいます。しかしエコキュートのヒートポンプで3倍の熱量を得られるので、実際は家庭で直接炊くのと同程度です。しかしエコキュートの場合、夜間の余剰電力を使うのと、夜間電力での割引があるために料金的にはお得になります。また発電に原子力などの出力調整の難しいものに切り替えてゆく場合、将来的には夜間電力が余ってしまうことになり、そのためには夜間電力の消費先を確保する必要があります。様々なリスクを抱える原子力発電が環境に良いかどうかは様々な議論がある問題です。
給湯と冷暖房だけで家庭の50%を超える排出量になりますが、これらは必要とする温度も低いので、様々な余熱や太陽光などの自然エネルギーも活用しやすい部分です。太陽光発電は様々なことに使えるエネルギーとしては価値がありますが、電気ではこの程度の温水の温度を作るためには不効率です。太陽熱温水器と比較して同じ面積で得られるエネルギーは1/4以下でシステムの設置費は3倍以上かかります。太陽熱温水器は自然エネルギーの活用のためには最も効率が良い方法だと思います。
将来的に期待されているのが燃料電池です。現在電気として家庭で使えるエネルギーは発電所で費やされるエネルギーの30%程度とされています。それを燃料電池に変えることによって、送電ロスをなくし余熱利用ができるので80%まで上げることができると言われています。
家電や照明での排出量は40%になりますが、家電で最大なのが冷蔵庫とテレビでその次には意外にも温水便座となります。冷蔵庫は1,994年以前のものと比較すると電気代は1/4以下になっています。
照明器具は冷蔵庫やテレビと同程度です。電球から蛍光灯に変えるだけで電気代は1/3、寿命は3倍になります。さらに最近はLEDの照明器具が出てきました。LEDでは蛍光灯との比較で電気代は1/2、寿命はさらに5倍以上伸びます。この意義は大きく、吹き抜けなどの手の届かない所でも、電球の交換を意識しないで器具の配置を行うことができます。寿命は10年と言われていますが、交換は専門家に任せて良いと思います。
太陽光発電+オール電化にして家庭で削減できるCO2はメーカー発表で年間1t程度です。これは17%程度に当たりますが、産業分野での増加は不明です。CO2削減で考えるとそれほど大きいものではありません。ただ昼間のピーク時の消費電力を抑えることができるのと、停電時に非常用電源として一部使用できるメリットはあります
薪ストーブ
最近見直されているのが薪ストーブです。燃料も木材の廃材などを利用したものが計画的に生産されるようになってきました。太陽熱を利用した温水器にしても太陽光発電にしても薪ストーブと比較すれば環境効率は到底及びません。屋根に乗せる数平米のパネルを作るのに希少鉱物を使い、巨大な設備を使って作られる発電装置と比較すると、薪ストーブを稼働するためのソーラーパネルは日本の国土の約7割を占める森林です。太陽電池と比較すれば生産コスト、耐用年数、周辺環境への影響などどれをとっても優れています。森林は夏の暑い時期に蓄えた熱(ヒートアイランド防止)を冬の寒い時に利用できるのです。欲を言えば、日本の最先端の技術を使って燃焼効率をアップし、排気をクリーンにできたならば素晴らしいと思います。
薪ストーブを使いたいというお客様には、燃料代や、環境性能だけでは勧めないようにしています。一番大切なことは、自然の炎を楽しみ、薪を用意することを楽しんでできるかということです。寒い日に自然の炎を囲んだ生活をしてみると、こんな単純なことで得られる温かさと癒しと刺激と充実感を得るために、近代化した生活環境ではいかに遠回りをしているかを実感できます。遥か遠くから石油を運び、石油ヒーターで生暖かい風を送り、テレビをつけて退屈をしのぎ、癒しを求めて週末ごとに出かけ、インターネットで自然の大切さを学ぶ・・・・・。それでも自然を目の前にしたさわやかな緊張感は得られません。
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