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メンテナンスフリーの幻想
化学建材の家は手間のかからないフリーメンテナンスとも言われてきましたが、今まで10年ごとに手間をかければ20年30年と長持ちしたものが10年ごとに新しいものにするというだけです。補修のしようがないというのがメンテナンスフリーの正体です、現在では家そのものも使い捨てのようになってきてしまいました。日本の住宅の平均寿命は25年といわれ、欧米と比べ1/3~1/5程度の寿命です。そして日本ほど買った住宅に手間をかけない国はありません。仕事が忙しくてそんな暇は無いと思う人もいるかもしれません。どんなに頑丈なものを作っても残したいという意思と愛情が無ければ寂れてしまいます。考えてみてください。住宅の寿命が倍になるということは今の住宅ローンが半分になるということです。少し早めに帰って立て付けを直したり、床を磨いても良いのではないでしょうか。しかし化粧材でできたメンテナンスフリーの住宅はそんな愛情も受け付けません。住宅の資産価値が異常に低いのも日本の困った特徴です。価値のないものにお金はつぎ込めないと思うのも当然でしょう。価値のある家つくりと価値を認める市場つくりの両面からの改革が必要です。
銘木と自然素材
プリント合板の見事な銘木を見慣れている人に安易に本物でやりましょうなどというと大変なことになります。銘木は自然素材のなかでも手を加えられていたり偶然にできたものであって、自然な姿ではありません。また工業化で養ってきた常識は自然素材には通用しません。1枚の銘木を10枚まとめて買ったら7割ぐらいになるだろうというのが工業化の常識なのですが、実際には1枚の銘木を10枚そろえることは材種や程度にもよりますが非常に難しく20倍の価格になってもおかしくありません。昔の神社仏閣の中にはそんなことをさりげなくやっているのですが、一般庶民がそんな場所に納まるわけにはいきません。
自然素材の使い方
木材の正しい使い方は山の木を無選別に入れて、1件の家の中で気になる部分は良いものを、野地板や物入れの中などは節物を使うことです。材木を仕入れるときに節の多いの少ないのと注文をつけることは本来好ましくありません。選別には人件費が必要ですし、無節を選んだ残りは節だらけになってしまいます。そしてそれを市場に任せておくと材木屋さんは手間をかけた上に大量の在庫を抱えることになり、それを安値でさばいていると、結局消費者のわれわれがその負担を払うことになるのです。
大量の木材を使うことに森林破壊だという人もいますが、その辺の供給さえ配慮されれば、建築という行為はむしろ空気中のCO2を固定し、保管しておく環境保全ビジネスです。木材などの有機素材は消費というよりもストックと考え、解体時には最低限肥料や燃料として使ってゆくべきだと思います。石や土はできるだけ身近なものを使用し、再利用を原則とすべきです。
傷がついてもあわてない
実物大の模型のような家が多くなりました。そんな家で育った人にとっては傷をつけたり汚したりすることは住宅に致命的なことをしてしまった様に考えがちです。新建材でできた家は汚れ方がみすぼらしく、ぴかぴかにしておかないと落ち着きません。表面が削れてしまったら下から全く違う醜い素材が出てきます。醜いのできれいなビニールで覆ってあるわけです。無垢の床材に対して汚れたら、傷がついたらどうするんですかとよく聞かれる場合があります。気の利いた営業マンは厚いので削ったら新しくなります。と説明しますが、実際はそんなことをする人はいないし、その必要もありません。木材などの自然素材は放っておいてもどんどん変化してくる素材です。傷がついたからといっても杉からラワンが出てくることもありませんし、無垢の床をつきぬけるような穴はそう簡単には開きません。傷や汚れが家族の思い出になり、人に対しても物に対しても優しく扱うことを覚えます、粗末に扱っているとみすぼらしい姿になってゆきますし、大切に扱っていると傷があっても汚れていても大切に扱われた痕跡というものが残るものです。その姿は人に郷愁と安心感を与えるものになります。歴史に名を残すような人物になればその痕跡の残った家や家具などは宝物扱いです。ビデオやテレビが無くても椅子や机や柔らかい木の床はあなたの人生の痕跡を後世に残す媒体になるのです。大切に使い込まれた傷だらけの床や家具がオールドパインとして新品よりも高価な値段で市場に出ています。イギリスでは古くても手入れの行き届いた家をキャラクターハウスと呼び新築よりも高値で取引されるそうです。日本でも侘び寂びを尊ぶ文化はあったはずです。芸術的な変化を楽しめるよう気を使いすぎない使い方をお勧めします。
朽ちてゆく過程に住まう
最近になって昔ながらの家つくる人が増えてきました。柱を見せる真壁工法に貫を通し楔で締めて竹で子舞を組み土を塗る筋交いや金物の普及する前の工法です。途中で何度も放置され、また思い出したようにやってきては工事をしています。昔の建築はなぜこんなにも手間をかけ、なぜ見えない壁の中までもきれいに作るのだろうかと考えてみました。
近代建築の巨匠ル・コルビジェは「住宅は住むための機械だ」と言いました。機械は目的を最小限の部材で達成させるために無駄を省き合理的であるということを賞賛されるべく進歩します。しかし住宅の目的とは何でしょうか。住む人を自然の驚異から守る?いや、都会で貴重になった自然は取り込みたいとも思います。肝心のところがはっきりしません。住宅は人類の歴史と共にあるもので後で何かの目的で作られたものではありません。物理的な目的だけではないはずです。礼儀作法や文化も多分に含まれています。また人間の作った機械は必ず壊れます。そして良く作られた機械ほどそれぞれの部材が100%そろわないとその機能を発揮ません。しかしテレビも自動車もある日突然壊れてあっけなく粗大ゴミとなります。建築の厄介なところは多少汚れても壊れても、しまっておくこともできませんし、すぐに壊すことができない場合も多いのです。住宅の換気装置のようなものの場合、壊れても気づかないこともあるでしょう。今までの使い捨てが反省され2倍3倍の耐用年数を考えると、設備などは当然100%でない場合の安全性と壊れたときの対処方法、製造会社がなくなってしまった場合の保証やメンテナンスをどうするかといった問題も出てくるでしょう。健康に住まうことは基本的人権なのですから重要な問題になると思います。
伝統建築はどうでしょうか、はじめから不十分な気密に雨仕舞い、雨水は入るが出てゆく、ぬれても乾くそんなあいまいな機能を持ちながら100年200年と風雪に耐える統建築は実は朽ちて行く過程ではないかと思います。なぜ見えないところまで気を使って美しく作っているかというと、造られて行く過程が美しいものは、朽ちて行くには逆の工程をたどり美しく朽ちてゆくからです。土壁が落ちコマイが見えてもそれはそれで全てが美しいのです。すぐに直せなくとも予算ができたら塗ればよいし、人々にストレスを与えることはありません。伝統建築が朽ちることは別のものを生み出すことでもあります。手入れのかかる屋根は朽ちても堆肥となり骨組みは竹でできており、すす竹は身の回りの道具になります。また家の裏山の竹は定期的に切らないと家や山を荒らし悪者になってしまいます。自然のサイクルですべてが循環しているのです。
命がけの住宅ローン
多くの人が住宅ローンを利用して家を作ります。そしてローンを組むときの担保として、当然のように保障協会への加入や生命保険への加入が条件として提示されます。しかしこれは世界的に見ても異常なことで、これから大金を出して作ろうとする家には既に価値を認めてもらえないのです。毎月10万円以上も払い続け、支払いができなくなると家を売り払っても莫大な借金が残り、死ぬまで借金に負われ、死んでしまえば生命保険でようやく払い終える。そんなシステムです。アメリカなどではある基準に合った家を作れば収入条件もさほど厳しいわけではなく、作った家を担保として住宅ローンは貸してもらえるそうです。そして10年や20年程度では住宅の資産価値は落ちず、手入れの行き届いた住宅はむしろ価値が上がってゆくのです。
誰のための家つくり
日本全国でほとんど同じ家を作ろうとする大手メーカーの家作りも考えものですが、個性や差別化を売り物に伸びてきた地場工務店の注文住宅にも問題があります。工務店は戸別に細かい注文に答えられることが大きな強みでしたが、あまりに個人の短絡的な趣味、趣向に左右されてしまうと、今度は生活の変化に対応できなかったり、住宅の寿命が長くなり住む人が変わると、使い勝手だけでなく趣味趣向が生活の妨げになってしまいます。中古市場の活性化が望まれる中、住み替えということも視野に入れて考えると、一般的な視点で見た資産価値というものを考えた家つくりをすべきです。そうした視点を意識することによってデザインへの意識が高まり、街並みもそろってくるはずです。そのために切り替えていかなければならない最低限の条件として、環境と健康と精神面に混乱を及ぼす偽装建材を排除して本物の材料を使うべきです。世界中の美しい街並みにはその国のその町の秩序というものあり、スタイルがあります。日本の国には特殊な気候であるにもかかわらず、世界中の国のスタイルが中途半端な出来損ないの模型のようにあります。個性とはまず自分の立場を理解することから生まれます。
造成
造成や開発の工事は環境の負荷を考えると最小限にとどめるべきです。日本人は稲作民族だから?とも言われますが、これほど多くの山間部を抱えながら、平地に対する憧れが強すぎるのも問題です。山間部であっても敷地全体を平らにすることを当たり前のようにやっています。造成にかかる費用や擁壁の耐用年数や埋立地のリスクや周辺環境への影響まですべてを知ったら、そんな造成はいらないという人も多いはずです。また傾斜地に家を建てる場合の法的手続きが極端に面倒になることも大規模な造成を後押ししています。
傾斜地の造成はできるだけ家の基礎を持ち上げる程度にとどめるべきです。そして持ち上げた基礎下の利用をもっと積極的に図るべきです。これは自然環境を保護し、国民の財産を有効に利用することです。世界各地で傾斜地に家を建てる民族はたくさんいますが、家の下だけを持ち上げ、地面と接する部分に出入り口を設けるのが一般的です。そうしたところで外に出るために自然に必要となるのが木製デッキという発想です。傾斜地であればデッキの下も有効に利用することができます。
傾斜地の擁壁
傾斜地の擁壁は傾斜地の土をせき止めるような形が主流です。そのために 擁壁は厚くなり、不完全な水抜きを設け、不確実な要素である地下水脈を切り裂くことになってしまいます。井戸水が枯れたからといっても役所は相手にしてくれませんし、自然災害の多くは大雨などでの水に起因するものです。傾斜地の 擁壁は等高線に対して平行に設けるのではなく直角に設けるべきです。そうすれば水脈をきることもなく、土厚も受けません。等高線と平行な方向の地震力をどう受けるかが問題になりますが、門型のラーメン構造等、解決策はあるはずです。傾斜に対して45度の角度で段基礎にしても良いと思います。そうすれば水は 擁壁沿いに流れ、直角方向の耐力壁を確保することができます。自然から受ける力を最小限にとどめることを第一に考えるべきです。
開発道路
傾斜地の開発の場合、開発道路をどうとるかということは重要なことです。環境面から考えた場合開発道路の概要は簡単に決まってしまいます。等高線に対して必要な水平距離をコンパスでとり、出入り口が決まったらそこから水平距離を確保しながら上の等高線に印をつけてゆけばそれが最小限の造成で可能な道路です。直線ではありませんが、自然な曲線になるはずです。敷地の隣地境界線は直線のほうがはっきりしてよいと思いますが、直線であれば二つの点を明確にしていれば良いわけで国境のように厳重な境界必要ないでしょう。それと関連して問題になるのが区画の形状ですが、四角でなければならないような小さな区画は避け、70から100坪程度のゆったりした区画が必要だと思います。
住宅地としての不適格地
およそ上記のような方法で開発できないような土地は、造成費もかさみ、環境も壊し、何よりも住む人に多くのリスクを背負わせることになるので基本的に開発すべきではありません。
本物は高いのか
本物の材料は高価な物だと思っている人は多いと思いますが、本当に貧しい国ではこんなに手間をかけた化学建材は使えません。反対に豊かな国ではこんなまがい物は使いません。日本の住宅は不思議な進化(退化?)をしているのです。日本で工業化住宅普及した理由に戦後の住宅不足があります。敗戦国としての劣等感もあり、政策的にも西洋化が進められて来ました。私達が歴史で教えられている西洋建築の情報にも片寄りがありました。ロココ、バロック様式や装飾柱、ベルサイユ宮殿、バッキンガム宮殿など、過装な建築は西洋の代表的建築ではありません。私達の生活に一番身近な庶民や地方の住宅は地域の素材を使ったとても素朴で質素であたたかい物です。
偽物を限りなく本物に近づけようとすると、はじめから本物を使ったほうが安上がりになります。実物大の模型のようになった現在の住宅でも価格は欧米の2倍以上といわれています。木で石を作り、石で木を作る必要がどこにあるでしょうか。重化学工業が日本の近代の発展を作り上げてきたことは確かです、しかしそれらが建設メーカーのトップに立ち、ここまで化学建材が蔓延している国は世界中を見まわしても他に無いのです。石油工業に少し悪酔いしてしまったのではないでしょうか。
工業化への片寄りは林業や材木屋や町の職人さんの生活も変えてしまいました。それまで直接行っていた経済の流れが巨大重化学メーカーに行ってしまっているのです。一度失われてしまった伝統技術はなかなか元には戻りません。円高の影響によって国内の職人は身動きの取れない状況です。考えてみればこれも重化学工業関係の過剰輸出の影響です。円高の影響で外国の建材が安価で出回るようになってくると最初は精度が悪い、サービスが悪いで排除していましたが、現在では本物の持つ圧倒的な質感と性能の前にもう言い訳ができない状態となってしまいました。それらを追求した住宅の多くが部材の関係で欧米スタイルになってしまったのも無理の無い事かもしれません。為替の関係とはいえ、一番輸送コストのかかる住宅で地球の反対側に近い場所から材料を持ってきた方が目の前の山でより安いのです。1万年後に日本の住宅が遺跡で発掘されたら大変なミステリーになるでしょう。またCO2の排出量で国際会議をしているかと思えばその塊のような木材まで国内に持込み、輸送でもまた大量に出しています。それでも業界ではこぞって環境問題を売り物にしているのも不思議な現象です。乾燥や加工や輸送での環境負荷が日本国内ではあまり取り沙汰されていません。さらには耐久性を含めて論じられなければならないでしょう。製品の環境に与える影響の大きさがヨーロッパを中心にLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)という考えで広まりつつあります。逆宣伝になってしまうのか、日本ではなかなか広まりません。
近年国内でも地元の木材を使った家作りも盛んになってきた。しかしまだまだ多くは非営利団体のNPOに支えられていたり林業そのものが国からの大量の補助金によって支えられているのが現状です。そうした動きは大切ですが価値観の認識が足りない分を善意や税金によって埋め合わせているといっても良いでしょう。理解を深めて国産材を使っていただくことも必要ですが、建設業や林業全体の規格化、合理化を進めなければいつまでたっても補助金頼りの産業から抜け出せません。
人間はわからないものを判断するのに90%以上を視覚情報に頼ると言われます。視覚情報のみを優先してしまうときれいに印刷された狂いのない新建材に素朴な自然素材はかないません。しかし本物の持つ効用は忘れられているのです。少し前まで無垢の素材というと銘木の高価な無垢材が使われていました。床材だとそれは合板の4倍~5倍の高価なものになります。それで無垢が高いと印象付けられてしまったように思います。しかしそれは自然の木の姿ではありません。プリントされた銘木を見慣れた人々に節のある無選別の無垢材を受け入れるにはかなりの勇気を有する事かもしれません。材料の収縮やそれに応じた補修もしなければいけません。しかしそれは生活を通して自然の多様性と、物を大切に使う事の大切さを学んで行く事になるのです。床材は一般的に良質のものを使用しますが色目の違いや多少の節を許してもらえば1.5倍程度の価格で収まります。現在では壁紙や左官材や住宅設備なども安価で安全なものが揃うようになりました。お客様の選択が次の市場を変え価格を押えることにつながるのです。
外壁、劣化、防水、雨仕舞
外壁には紫外線による劣化防止と防水、防火、防汚、室内の余分な水蒸気や化学物質を排出する皮膚又はそれ以上の性質が要求されます。ロックタイルやサイディングなどの塗膜やコーキングなどのゴム系防水の寿命は、紫外線の影響で直射のあたるところでは10年と持ちません。仕上のモルタルで覆ったりカバーをかぶせる事によってもっと長持ちさせる事もできますが基本的にはコーキングに頼らない防水工事を心がけたいと思います。立ちあがりを十分に設けて物理的に流れ込まない様に考え、防水を完璧にする事よりも進入した水は速やかに排出し、乾燥を妨げない工夫をすべきです。築100年の民家の雨仕舞は完璧とは言い難いものです。しかし雨が入ってもすぐに乾く仕組みになっています。防水を考えるあまり不透湿の素材を重ねると重なり部分に水が上り、また一度入った水が乾燥できずに腐れの原因となる事があるので注意が必要です。
外壁は建物を守る役割と当然のことながら建物の外観や町並みを形作る大切な要素です。近年一般化しているサイディングや吹付け塗装は劣化が早く7~10年おきに塗り替えが必要になります。変化の早い町並みには歴史や伝統の重さなどを語るものとはならず、処分された廃材で環境を汚染し、何よりも不経済です。
一般的な家(サイディング)の壁の構成は、内側から、ビニールクロス・石膏ボード・グラスウール(防湿層・グラスウール・透湿防水層)・通気層・合板・透湿防水紙・通気層・サイディングとなっています。こんなに手間をかけながら、外壁の耐用年数を決定するのは外壁の表面に塗られた1mmに満たないペンキの膜で、防水をしているのは最後になすったコーキングの膜1枚です。内部で各部屋を外気から守るのは前述のとおり石膏ボード1枚で、外部の環境から守っているものは1mmに満たないのです。日本では高温多湿の特殊な環境から建物を守るために水蒸気までも通さない仕上材が発達しました。しかしこれは大きな間違いで水蒸気は室内の生活でも多量に発生しているのです。そうした湿気から構造材を守るために壁の中に風を通す通気工法が発達してきました。そして出来上がったのが上記のような複雑な構造で、快適性までも犠牲にされてきました。実際には耐久性も実現されていないのが現状です。そして10年置きに迫られる大規模な改修工事の前に、新しい工法の家ならばもっと良くなると信じて建て替えてしまうのです。
外壁には透湿性を確保した方が構造材をむらなく乾燥させることができます。そしてよけいな通気層をなくす事によってすべての壁材を断熱材として利用できます。伝統的には土壁や板壁などが用いられてきました。材料の確保や防火性の問題があり一般的な工法とはなりえませんが、許される地域ならばその方が耐久性もすぐれています。その他には透湿性のある珪藻土等を用いての左官工事を復活させるべきでしょう。左官材は塗膜と違い30年くらいはもちます。もともとが土を原料とした無機質の素材なので、解体処分後も環境負荷は少なくてすみます。元気の家ではその他の方法でも透湿性と耐久性を併せ持った工法を採用又は開発しています。透湿性や通気性を持たせた天然の外壁材は凸凹が多く外部から花粉などの有機物の付着や、吹き込んだ雨を保水してカビや藻類などの繁殖を誘うことがあります。軒はできるだけ深くとり、可能ならば撥水処理や酸化チタンのような分解機能を持たせても良いと思います。
焼き杉
焼き杉は非常に耐候性のある素材です。防火の制限などで使用できないこともありますが下地に耐火性のあるダイライトを張って透湿防水紙の上に張ればOK(なところもあります。)本来は現場で焼いてぼこぼこになった表面の炭を落とさないように止めていきます。炭は撥水性があり、紫外線にも強く、焚き火のあとは古墳としても出てきます。そんな焼き杉は20年から30年はノーメンテで持つそうです。ぼこぼこの墨が落ちた後はきれいな灰色の浮造りが表れます。出来立ての焼き杉は火事場の後のような決して美しいものではありません。30年後に一番美しくなるなんとも気の長い素材です。既成のものは炭が落ちやすいので待ちきれずに、この浮造りの状態で出荷されます。しかし一番耐久性のあるのは残念ながら炭の部分です。
腐朽菌
腐朽菌は温度、湿度、栄養分の3つの条件が揃うと爆発的に増殖をはじめます。しかしそれらのうちの一つが欠けても急激に増えることはありません。(最近ではその条件がそろって酸化が進みイオンバランスが崩れたところにシロアリや腐朽菌がかぎつけて集まってくるとも言われています。昔の床下は結構強かった。塩の効果は殺菌とイオンを安定させる効果があります。)日本の夏の高温多湿という条件は腐朽菌の繁殖には非常に好条件です。欧米では木部の納まりについては非常にアバウトです。ドイツで最新鋭のエコ住宅を視察した時も塗装はしてあるものの木製デッキや軒の少ない板張りはたくさんありましたが、築年数の割には腐れが全くないのに驚きました。日本で木製デッキを維持するのは少々努力が必要です。環境先進国ドイツの自然塗料とて日本で使用すると素材の含水率の問題もあるのでしょうが、カビの問題には悩まされる事があります。住宅のデザインは地域固有のものです。情報は国際化し海外の住宅デザインも目にすることが多くなりました。地域の事情を考慮しなくなったことも日本の住宅寿命を縮めている大きな原因です。
世界最古の木造住宅は日本にあることも忘れてはいけません。木材の選択や雨仕舞については日本古来の木造建築を参考にすべきです。古い民家に防水、防湿という考えはありません。軒を深く取り最低限余計な水は入り込まないようになっていますが、進入した水はすぐに乾く仕組みになっています。国内外の長寿命の家に共通していることはどちらも常に手を加えながら長持ちしているということです。
現在では防水、防湿を完璧にする事に細心の注意をしながら。一旦入り込んだ水は出口がなくなり家を腐らせてしまうケースがほとんどです。
国産木材の杉、桧、ヒバ等の特に心材には抗菌防虫効果の高い芳香成分が含まれています。当たり前のことですが自然の木も環境に合わせて防衛手段を持たなければ森の中で立っていることはできないのです。欧米の一般的構造材、SPF(スプルース、パイン、ファー)は寒冷地で育つ木なのでそうした成分は少ないのです。そんな意味でも身近な材料を使うということは大変理にかなっていることです。
日本固有の木材文化
日本の住宅の材料として最も一般的なものは杉です。乾燥材の重要性が叫ばれて久しいのですが、狂いを気にする業者はほとんど外材に切り替わってしまいました。杉は木目の美しさでは最高の材料なのですが。乾燥が難しい木です。生育条件で含水率が異なり、1本の木の中で場所によって含水率が異なります。無理に乾燥すると割れる材も多く歩留まりが悪いのも特徴です。
木材も繊維方向によって乾燥収縮率が大きく異なります。適材適所で考えてゆけば回避できる問題も多いはずです。木材の自然乾燥には時間がかかりますが、屋外での気乾状態で季節の変動を考えると東京で12%~16%程度の含水率まで下がります。それまでの杉、桧の収縮率は最大の板目方向(T)で3.5%、柾目方向(R)はその1/3程度、柱として使用する縦方向(L)では板目の1/100程度です。又含水率1%当りの収縮率はT:R:Lで0.26%:0.09%:0.01%(杉)程です
柱材としてなら杉、桧の収縮で建物全体が歪むようなことは考えられません。一番問題なのは梁材で30cmの梁材が3%縮むと1cm程にもなります。内装材では平均的に温度が高く雨露にさらされないため更に乾燥する事が考えられます。
元気の家では部材ごとに乾燥率を定め、品質の管理に務めています。無垢の国産材を使用しますので、それでも多少のひずみは生じます。
・構造材の梁で20%以下、主に信頼性が高く安定した米松の乾燥材を使用。
・土台や柱では25%以下、地域環境に配慮した地元の杉、桧を使用。
・床や壁などの内装材では15%以下まで乾燥したものを使用。
・低温水式、又は蓄熱式の床暖房を使用する時は10%以下まで乾燥したものを使用。
構造
現在一般の工務店が行っている筋交いの入った在来軸組み工法はそれほど長い歴史のあるものではありません。筋交い工法は部材の仕口に引き抜く力が働くので、金物が無ければ成り立たない工法です。木部同士は何とかできても昔の自然石の上に置いた土台と基礎とではどうにもなりません。普及の過程でも昔の大工さんは付け根で家が突き上げられることを恐れてなかなか使いたがらなかったそうです。最近になって義務付けられたホールダウン金物を見ても、最初からこんな金物が必要ならば筋交いは普及しなかっただろうと思います。筋交い工法は非常に変形の小さい工法で、現在普及している石膏ボードなどの下地材やサイディングなどの仕上材はすべて変形が小さい事を前提に作られています。昔ながらの大きな開口部と貫や束石の工法を用いると小舞竹や土壁の組み合わせが必要で、変形に追随できないモルタルや石膏ボードは使用できません。地震のときにひびだらけになってしまうからです。筋交い工法に土壁は使用できますが、貫工法にサイディングや石膏ボードは使用できないのが原則です。
床下考
近代住宅の抱える大きな問題として床下の防蟻処理の問題があります。
人体に対しても有害な事が明らかな薬剤を使いながら、シロアリや腐朽菌を防止する上でなくせませんでした。風通しが大切なことは良く言われ、昔の家は風通しが良かったからという言葉も良く聞かれますが昔の家でもそれほど風通しを優先させたようには思えません。そんな床下の抱える問題を考えてみます。
昔の家の床下はそれほど風通しが良かったのでしょうか。日本の伝統建築には床下の風通しを意識して作られているものとそうでもないものあります。明かに風通しがよい物には高床式倉庫、神社、お寺、等があげられる。そしてこれらに共通して言えるのは人が生活していないということです。建物の床下は最も重要な部分でありながら過酷な条件にさらされます。虫、カビ、浸水、自重、地震・・・。そして重要な要素に一年中日があたらない床下は何かしない限り冷たくなりがちです。そして冷たい床下に夏の湿った空気が流れ込むと乾燥ではなく湿気を呼んでしまいます。最近ようやく認識され始めた事だが、湿気を追い出すのにはそんなに大きな開口部は要らないそうです。昔、囲炉裏の火は1年中絶やされませんでした。囲炉裏の日が絶やされた時点で民家も本来の性能を失ってしまったように思います。一方人が一人部屋の中にいるだけでおよそ100Wの発熱があるそうです。そして人が生活するためには火を使いたくさんの熱が放出されます。そして結論から言えばこれらの建築は生活者がいないため家の中や床下を暖める事ができない。そしてそんな床下の温度を下げず、外気温に少しでも近づけるために大量の風を通す必要があるのです。それでは民家はどうかといえば通風孔の様な所には飾り彫りで微妙な隙間が開けてあって空気の出入りはできるけど積極的に風を入れようとしている様には思ません。なぜこうなったかを推測してみると冬場、まず床板が15~20mm程度しかなく、節穴が抜けたような板で風通しを良くしたら寒くて仕方ないでしょう。そして土間に地下に焚かれる囲炉裏は床下を暖め、湿気を抜くためには前述の通りそんなに大きな開口部は必要ありません。お茶室等では四方の壁を地面まで塗り下げている物もあります。そしてその中心には炉が切ってあって床下まで暖めるようになっています。特に炉が切っていなくても人が生活する空間では冬は常に外気よりも温度が高めになっていたと思われ、床板一枚の状態では床下も暖められていたと考えることができます。そして外気より暖められた空間を微妙に風が抜けることによって乾燥が促されていたのではないでしょうか。すなわち昔の人は風通しを良くするよりもあたためることに重点をおきその事の方が優先されたのではないかと思います。
煙の効能
かまどや囲炉裏の生活ではでいつも生活の空間には煙が漂っていました煙でいぶされた空間に虫が入りずらい事は周知の事実です。そんな煙の成分を手っ取り早くまとめた物に木酢液があります。最近防蟻処理として使っている業者も多いようですが、一般的には農業用で虫除けとして使われたり、土中の有用バクテリアのえさになるので土壌改良に使われます。そして改良された土は細かい粒状になり吸放湿効果が高くなります。有用バクテリアの中にバチルス菌(納豆菌)があります人体には有益無害で、カビを食べてしまうそうでそんな有用バクテリアが先住しているところには木材の腐朽菌は近寄れない事も考えられます。そして様々な複合効果が結果として最善の環境を作り出しているのが伝統の重みです。
バチルス菌
船瀬邸の壁の構成で一部失敗し、これからの家作りの為の貴重な教訓になったことがあります。それは外壁の漆喰壁にカビが生えてきたということです。全く対策を講じていなかったわけではありませんが漆喰とその下地のダイライトまで多少の親水性がある事はわかっていたのですが、自然はそんなに甘くなかったようです、漆喰はアルカリ性でカビが生えずらいということと、下地までの親水性は昔の土壁よりは少ないだろうという推測のもとに決定しました。(ちなみに下地のダイライトは24時間吸水後の寸法変化で0.12%厚さ変化0.3%吸水率8%凍結融解試験300サイクル異常なしというメーカーデータがあります。強度的には充分で、素材にカビの餌になるものは無いので極端な繁殖は無いと思います。)
ちょうど期を同じくしてわらの中にいるというバチルス菌を使ったカビ取り材というものが手に入り、伝統工法の恐るべき性能に愕然としてしまいました。すなわち土にわらを入れて発酵させるというあまりにも原始的に思えた工法はつなぎとしての強度を上げる他にカビを食べるバチルス菌を練り込んでいたのです。バチルス菌は乾燥状態ではおとなしくしていますが、通常カビが生えるような湿潤状態になると活発になりカビの繁殖を押えます。知ってか知らずか昔の人はすごいことをやっていたのです。今度、バチルス菌を作っている会社と提携し、面白い建材を作ってみたいと思います。これは今までホルマリンで防カビ防腐を行ってきた建材に対して革命的なことかもしれません。天然系の防腐防カビ材もありましたがコストの問題と持続性の問題がありました。バチルス菌なら増殖できるのです。
太陽エネルギーの利用
太陽電池
太陽電池はエネルギーの15%程を電力に変換して利用することができます。電力規制も緩んできて、一定出力以上の設備があれば電力会社に売電する事もできるようになりました。現時点での原価償却は厳しいそうですが、これから普及すれば可能になるのでしょう。あまりお勧めしないのは変換効率が悪いことと、補助金目的なのか、国内の価格が異様に高すぎるからです。日本の製品は非常に優秀ですが、国外では同じ国産の製品が半額以下で普及しています。補助金が無くなってもたぶん同じ程度の出費で入手できるのではないでしょうか。技術力のある企業が独占しているためか競争原理が働かず、補助金が普及のためでなく、企業の為に偏りすぎているように思います。
太陽熱温水器
現在給湯器は非常に便利になり、お風呂のお湯張りもスイッチひとつで、水位も水温も設定値に保たれます。家中どこの水栓をひねっても一定温度のお湯が出て決してそれ以上になることはありません。太陽熱温水器はエネルギーの50%程度を利用でき歴史もある利用法です。しかし自然は本来気まぐれなものでそれを利用するためには危険を伴うこともあります。そんな自然との共生と安全性と便利さの間で太陽熱温水器を利用するためにいくつかの選択をせまられることになります。
温水器の種類
・直圧式(水道の水をそのまま暖めて使うもの)
ローコストですが重いこと、温水量が少ないことと衛生面での不安があります。あまり貯めて置けないので、独立した水栓を儲けた毎日使うお風呂の給湯にむいています。熱いお湯が出ることがあるので注意が必要です。
・貯湯式(不凍液を利用して熱交換をしてお湯をためておくもの)
割高ですが給湯菅や給湯器に直接つなげて利用できます。給湯器につなげる場合や直接給湯管につなげるには、安全のため手元で水温をコントロールする定温止水栓をつける必要があります。フルオートの給湯器につなげて温度を調節する事もできますが一度水を加えて温度を下げ、再び定温まで加熱するという複雑な経路をたどることになり快適さとエコロジーの間で矛盾を含むシステムになります。メーカーによってはもう少し便利で環境重視のシステムもあります。(シロキ『ニュー・ひまわり』)
薪ストーブ
薪ストーブは立派な太陽光を利用した熱源です。樹木は光合成で大きくなるからです。森のバランスを崩さない程度の利用ならば生活に森の大切さを意識させるものになります。弊社の活動エリア、飯能市の近辺であれば材木業者も多く調達の苦労はありますが十分エコロジーな暖房器具です。問題はまきストーブは本来広葉樹用に作られたものなので針葉樹を燃やすと火持ちが悪いのと、煙突がつまりやすいということです。また広葉樹は大胆に切っても根っこが生きていればひこばいとして成長しますが、針葉樹は切ってしまうとそれまでで、また植えなおさなければいけないということです。名栗の森も針葉樹から広葉樹への切り替えが進めば良質の景観と薪が手に入るようになると期待しています。薪を準備するにはそれなりの苦労も必要なので、燃料が安いとかムードだけにあこがれる人にはお勧めしません。汗をかき薪を割るという作業を楽しめる人にお勧めします。ちなみに薪ストーブだけで暖を取ろうとすると一冬で2tトラック1台分程度の薪が必要です。半端ではありません(ストーブに入れば丸太のままでも十分燃えます)
バイオマス・ペレットストーブ
針葉樹のストーブができないかという長年の課題がありました。近年燃料も確保できるようになったペレットストーブは針葉樹でも効率よく燃やすことができ、手入れも簡単な熱源としてお勧めです(埼玉県飯能近辺)。国内でも燃料生産が始まっており、杉皮や木片の利用が期待されています。ちょっと変に思うことはこれも補助金行政がからんでウサギの餌のようなペレットを作るのに数億円の施設を準備するそうです。日本は社会主義ではないので強制的に広めることはできません。ウサギの餌を作るくらいもっと家内工業的にできる機械ができそうだと思うのです。実際国内でも開店休業のようになっている大規模施設がいくつもあるのだそうです。
風力発電
風力発電の普及しているデンマークでは既に十分元の取れるビジネスとして成り立つ為に補助金も有りません。日本に進出する際には台風の強すぎる風をどう受け流すかが課題のようです。小規模で使おうとすると高速回転式のものが多くなるので音の問題で近所から苦情が来る事もあります。
東京電力でも市民から基金を募り研究をしています。実際は発電にかかるコストだけでなく、見学のための道路整備や宣伝広告費も発電費用として算出されているのでまだまだ割高です。ちなみに原子力発電の費用に使用済み核燃料の保管と廃棄の費用は含まれません。その辺を平等に比較できる資料をそろえることが基金を募る大前提だと思います。
(雑)ワンハンドル水栓の正しい使い方
世の中視点が変わると余計なものまで多くなっていることがあります。その1つにワンハンドル水栓があります。台所についている1本でお湯にも水にも切り替えられるのがそうです。ハンドルを持ち替えずにお湯にも水にもできるので便利なのですが、エコロジーの視点からは問題があります。大体真中の位置にレバーが来ていますので、お湯を使いたい時も水を使いたい時も一度給湯器にも火をつけてそれから水に切り替えたり水を余計に捨ててお湯に切り替えたりしています。台所の窓があいていると給湯器のため息の様な音と、ガスの臭いがしてきます。最近では給湯器だけで温度設定ができるので2ハンドル水栓だけで快適なはずです。本来はお湯を使うのか水を使うのかを選択した上で温度調整は行うべきです。
正しい使い方は右か左かにいっぱいにひねって水かお湯かを選択し、次に上下に動かし水量を調節し、必要ならそれから少し戻して水温を調節すべきです。水の場合はむやみに戻すべきではありません。台所のシステムキッチンなどははじめからワンハンドが標準になっているので無理には薦めませんが、洗面台にはできるだけ2ハンドルをお勧めしたいと思います。考えないで使うにはその方が本体も安くて経済的です。